第七回「成果は生き抜くための最重要な関心事」
こんにちは、トーマスワンです。
私の勤務先では、大小問わず一つのプロジェクトが終わる際には、皆でその成果を称え合います。
「すばらしい」
「ありがとう、○○さん」
「みんな素晴らしい働きをしてくれた」
など、メールや口頭で表明します。
見ていて少々照れくさく感じるくらいの大げさなアクションなのですが、むしろそうすることが当たり前のようです。
様々なバックグラウンドの人材で成り立っているシリコンバレーの企業社会では、自分の価値を証明する基本は成果です。雇用と報酬は常に成果によって勝ち取るもので、定期的に行われるボスとのミーティングでは、その期間内にどのような成果を上げたのかがテーマとなります。従って、この成果は誰によるものなのか、ということに皆大変敏感です。
そうだからこそ、具体的な人や部門の名前を挙げて、その成果をもたらした人達を積極的に確認し合います。意図的である無いいずれにせよ、他人の成果を自分のもののように振る舞うと、大変な反発を食らいます。時には、成果の獲り合いも発生します。
もし、不幸にして成果を上げられなかった場合ですが、誰かが責任を負うことになります。失敗の程度にもよりますが、成果を上げられなかった人やチームは、いずれ退職するか解体されてしまいます。
ただ、このような失敗については、多くの人は誰にでもありうることと、冷静にとらえています。勤務期間中には失敗だけで無く成果もあります。結果的にその会社を去っても、転職活動の際に、失敗が問題視されることは少ないようです。一例ですが、最近私の勤務先を去ったある同僚は、程なくGoogleへの転職が決まりました。
働く側としては、与えられた環境の中で成果を上げる、あるいは失敗することも含めて経験を蓄積し、他社に転職することでさらに新しい経験を蓄積していきます。企業はそうした豊富な経験を持った人材を求めています。
日本の企業では、成果にここまで敏感ではないことが一般ですが、この地で生き抜くための最重要な関心事なのです。
これまで7回にわたって、シリコバレーでの働き方を書いてきましたが、今回で最終回となります。シリコンバレー(あるいはベイエリア)と言っても、実に様々な企業があり、経営者がいるため、社風はそれぞれです。日本でよく「シリコバレーでは○○」という言い方がされますが、私のコラムを含め、あくまでも数多くある中の一つの例に過ぎないと解釈していただいた方が良いと思います。
それでは、またいずれの機会に皆さんとお会いしましょう。
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